事業成果
本事業は医歯工法および地域との連携により、児童虐待や薬物中毒、未知の感染症など臨床分野への応用を可能とする「臨床法医学」の資質を備えた基礎研究医及び関連職種の人材を養成するものです。具体的には、令和2年に採択された文科省「先端研究基盤共用促進事業」と連携し、石川県警察本部科学捜査研究所および関連施設がもつ児童虐待や薬物中毒等に関連する情報を教育用にデータベース化し、参加大学教員および学外連携機関職員がそれらを活用することで実践的な生体鑑定模擬演習を含む法医学専門教育を行います。さらに臨床統計や関連法規、歯科法医学、検案実習などからなる法医学基礎科目、卓越大学院、工学・分析系とも連携した法医学先端研究科目をカリキュラムに加えることで、より先駆的な「臨床法医学」を実践できる人材を養成します。本プログラムの成果は北陸地区のみならず、東北地区を含む他府県への波及が可能であると考えられます。
金沢大(代表校)、秋田大、金沢医大(連携校)、日歯大(協力校)の4大学がコンソーシアムを形成し、連携して本事業に取り組むことから、各大学保有の豊富な事例データを判例別に「生体・解剖鑑定データベース」に集約し、1つの大学では作成し得ない新たな教育用データベースを構築することが出来ます。
本科コースでは、この鑑定データベースを利用した模擬演習や実際の生体鑑定での鑑定書の作成演習、科学捜査研究所・児童相談所等でのインターンシップ等を通じて臨床法医学者としての経験を積むことが出来ます。また、法医・病理・正常解剖や検案の経験も積み、死体解剖資格の取得や死体検案トレーニングを行います。資格取得は法医・病理・解剖学者のみならず臨床医にとっても有用であり、プログラム修了後のキャリアパスを強めます。プログラム修了時に死体解剖資格等の申請資格を得ること、さらにプログラム修了後も鑑定データベースへのアクセスを認める「医歯臨床法医」(コンソーシアムで認定)の資格取得が期待できます。特に優秀な学生のために教員及び児童相談所勤務医ポストを合計4席(法医学教員2席及び児童相談所勤務医等2席)以上確保し、法医・歯科法医学基礎研究医を輩出します。
インテンシブコース修了者は、一般病院、医院、歯科医院、警察、児童相談所等における児童虐待見過ごし防止、薬物中毒、未知の感染症対応に貢献することが期待されます。特に医師は警察協力医、看護師はフォレンジック看護専門家としての活躍が見込まれ、法学者は法曹三者に、警察や児童相談所では司法警察員ならびに児童福祉司の上級職が期待されます。修了者には「臨床法医学専門員」認定を行い、キャリアアップやセカンドキャリアの機会を提供します。